【大阪労働局長】令和7年度 全国労働衛生週間を迎えて

大阪労働局長 高橋 秀誠

 建設業労働災害防止協会大阪府支部会員各位におかれましては、日頃から労働災害の防止活動、労働衛生・産業保健活動の向上に向けた取組にご尽力賜り、厚く御礼を申し上げます。
 今年で第76回を迎える全国労働衛生週間は、昭和25年の第1回実施以来、労働衛生の重要性に関する国民の意識と機運を醸成し、事業場における自主的労働衛生管理活動を通じた労働者の健康確保に大きな役割を果たしてきました。
 労働者の健康をめぐる状況につきましては、高齢化の進行による一般健康診断の有所見率の上昇、何らかの疾病を抱えながら働いている労働者の増加、女性の就業率の上昇に伴う働く女性の健康問題への対応が課題となっています。また、業務上疾病は引き続き高い発生件数で推移しており、熱中症や腰痛など、気候変動、高齢化等を要因とし増加傾向にあります。こうした労働環境を取り巻く変化に対応し、あらゆる労働者が健康に働き続けるためには、安心して安全に働ける職場環境づくりの推進が重要です。
 また、全国の過労死等事案の労災認定件数は、令和6年度には1,296件、そのうち大阪では120件であり、引き続き過労死等を防止するためには、働き方改革の推進と相まって、長時間労働による健康障害の防止対策の推進が必要です。さらに、全国の精神障害による労災認定件数は令和6年度には1,055件と過去最多となり、そのうち大阪においても85件と過去最多となった昨年度と同数であり、職場におけるメンタルヘルス対策の取組の一層の促進が必要となっています。特に小規模事業場におけるメンタルヘルス対策の取組の推進が重要となります。

 化学物質による健康障害防止については、国が行うGHS分類の結果、危険性・有害性があると区分された全ての化学物質を対象として、事業者がリスクアセスメントを実施し、その結果に基づく措置を適切に実施する制度が全面的に施行されています。
 また、職業がんの労災補償の新規支給決定者は、石綿による中皮腫・肺がんを中心に年間約1,000人にも及ぶところ、石綿含有建材を用いて建設された建築物が今なお多数現存しています。その解体工事が2030年頃をピークとして、増加が見込まれる中、一定の建築物や工作物などの解体・改修工事については、資格者による事前調査や、石綿事前調査結果報告システムを用いた報告の義務化など、石綿によるばく露防止対策の強化を進めています。
 このような状況を踏まえ、第14次労働災害防止計画において「自発的に安全衛生対策に取り組むための意識啓発」や、「労働者の健康確保対策の推進」、「化学物質等による健康障害防止対策の推進」等合計8つの重点を定め、労働災害防止対策を進めています。
 これらに加え、令和7年5月に労働安全衛生法等の改正法により、労働者数50人未満の小規模事業場に対してストレスチェックの実施が義務付けられました(施行日は公布後3年以内に政令で定める日)。また、危険性・有害性情報の通知義務に罰則を設けることや、個人ばく露測定を作業環境測定として位置づけ、作業環境測定士に実施させること等も新たに規定されています。
 さらに、令和7年6月に治療と仕事の両立支援のための必要な措置を講じることが事業主の努力義務とされました(施行日は令和8年4月1日)。
 こうした背景を踏まえ、今年度は、

「ワーク・ライフ・バランスに意識を向けてストレスチェックで健康職場」

をスローガンとして、全国労働衛生週間(10月1日~7日)を展開いたします。
 各事業場におかれましては、本週間を契機として、事業場内において、ストレスチェックやリスクアセスメントの実施及びその結果の活用等、日常の労働衛生に関する取組について、総点検を実施していただき、自主的な労働衛生管理活動の一層の促進を図っていただきますようお願い申し上げます。