令和4年度全国労働衛生週間を迎えて

大阪労働局長 木原 亜紀生

 今年で第73回を迎える全国労働衛生週間は、昭和25年の第1回実施以来、国民の労働衛生に関する意識を高揚させ、事業場における自主的労働衛生管理活動を通じた労働者の健康確保に大きな役割を果たしてきました。

 労働者の健康をめぐる状況については、脳・心臓疾患、精神障害の労災認定件数が令和3年度は全国で801件と、ここ数年は減少傾向がみられていません。また、令和3年労働安全衛生調査の結果では、仕事や職業生活に関する強い不安・悩み・ストレスを感じる労働者は半数を超える結果となっております。

 過労死等を防止するためには、働き方改革の推進と相まって、長時間労働による健康障害の防止対策及びメンタルヘルス対策の推進が不可欠となります。

 また、新型コロナウイルス感染症のり患による休業4日以上の労働災害は、昨年19,000件以上にのぼり、事業場で留意すべき「取組の5つのポイント」をはじめ、職場の実態に即した感染予防対策の徹底をお願いいたします。

 人生100年時代に向けて、高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境づくりを推進するため、エイジフレンドリーガイドラインの推進を図るとともに、増加傾向にある転倒・腰痛災害を予防するため、若年期からの健康づくり等にも取り組まれますようお願いします。

 何らかの疾病を抱えている方が、治療を受けながら仕事を続けるため「治療と仕事の両立」の支援について、社会的な関心が高まっています。特に、がんの治療を受けながら就労する方は、平成22年は32.5万人でしたが、令和元年には44.8万人まで増加しております。このような状況の中、治療と仕事の両立支援は、働き方改革の重要な取組事項と位置付けられ、働き方改革実行計画に基づき、関連施設の充実・強化を図ってまいりました。

 大阪労働局といたしましても、治療と仕事の両立を支援する活動を推進するため、本年度の大阪・職場の健康づくりフォーラムのメインテーマとして、先進的な健康経営に取組まれている企業の事例発表や、治療と仕事の両立支援について造詣の深い、大阪労災病院治療就労両立支援センター長の久保田昌詞先生よりご講演をいただくなど、事業場の自主的な取組みの一助となる活動にも注力しております。

 このほか、化学物質対策について、令和42月に労働安全衛生法施行令等、令和45月に労働安全衛生規則等を改正したところです。改正法令の周知や関連法令に基づく取組を徹底するとともに、化学物質による労働災害全体の8割以上を占める(がんなど遅発性の疾病を除く)特別規則の対象となっていない化学物質について、各事業場におけるリスクアセスメント及びその結果に基づくリスク低減対策の実施を確実に行うなど自律的な管理が求められます。

 また、石綿による職業がんの労災補償の新規支給決定者は全国で年間約1,000人に及んでおり、今後も、石綿含有建材を用いて建設された建築物等の解体工事の増加が見込まれることから、建築物等の解体・改修工事における石綿暴露防止対策の徹底及び同対策の実施における発注者による配慮についても推進いたします。

 今年度は「あなたの健康があってこそ 笑顔があふれる健康職場」をスローガンとして全国労働衛生週間を展開し、事業場における労働衛生意識の高揚を図るとともに、自主的な労働衛生管理活動の一層の促進を図ることとしておりますので、各事業場におかれましても、これを機に、職場の労働衛生対策について総点検を行い、自主的な労働衛生活動の定着に向け、取組を進めていただきますようお願い致します。