【大阪労働局】令和元年度全国労働衛生週間を迎えて

井上 真 大阪労働局長

 

 本年度も全国労働衛生週間の時期がやってまいりました。この全国労働衛生週間は、昭和25年の第1回以来、毎年10月1日から7日まで実施されているもので、本年で第70回を迎えます。この間、国民の労働衛生に対する意識を高揚させ、事業場における自主的労働衛生管理活動を通じた労働者の健康確保等に大きな役割を果たしてきました。

 労働者の健康をめぐる状況についてみると、一般健康診断における有所見率は5割を超え、年々増加を続けています。

 また、過重労働等によって労働者の尊い命や健康が損なわれ、深刻な社会問題となっています。脳・心臓疾患、精神障害の労災認定件数は、ここ数年全国では700件台で推移しており、そのうち死亡又は自殺(未遂を含む。)の件数は、平成30年度は158件となっています。

 大阪府内の状況を見ましても、平成30年度の脳・心臓疾患に係る労災申請件数は90件で、認定件数は37件と4年連続の増加となっており、そのうち死亡は11人と、過去4年間で最も多くなっています。精神障害についても支給決定件数は30人でほぼ横ばいという結果になっています。

 このように、仕事や職業生活に関する強い不安、悩みまたは、ストレスを感じる労働者は依然として半数を超えている状況にあり、また、約3割が、職場において仕事上の不安、悩みまたはストレスを相談できる相手がいないと感じています。

 しかし、50名以上の事業場でストレスチェックを実施している割合は、83.3%にとどまっており、そのうちストレスチェックの結果を職場や部署単位などで集計・分析し、職場ごとのストレスの状況を把握する集団分析を実施した事業場は、85.9%という結果となっています。

 このような状況を踏まえ、大阪労働局では、今年度から施行された「働き方改革関連法」等による「『過労死等ゼロ』緊急対策」に基づき、事業場におけるメンタルヘルス対策の積極的な取り組みを呼びかけています。

 大阪府内では、職場において化学物質等の取扱い中、運搬中、また、他の作業中等に、化学物質との接触、吸入等による化学薬傷、中毒等の災害が増加しており、特に皮膚接触による薬傷等の災害が顕著となっています。

 化学物質の取り扱いには、化学防護服、化学防護手袋、保護眼鏡等を使用することが重要となります。

 今後も、化学物質対策につきましては、ラベル表示・安全データシート(SDS)の交付・入手の徹底に引き続き取り組むとともに、リスクアセスメントの確実な実施をお願いいたします。

 過去の石綿ばく露により石綿関連疾患を発症したとして全国で労災支給決定された件数は、近年、1,000件前後で推移しており、そのうち、特に建設業では500件を超えています。また、石綿建材を用いて建設された建築物が今なお多数現存しており、その解体工事が2030年頃をピークとして増加が見込まれる中、解体、改修前に義務づけられている石綿の有無に関する事前調査や石綿の発散防止措置が適切に行われていない事例が散見されています。

 このような観点から、事業者はもとより労働者や管理監督者及び産業保健スタッフが一丸となって健康管理を進め、労働者の健康が確保された職場の実現を目指すため、今年度の全国労働衛生週間は、

 

「健康づくりは 人づくり みんなでつくる 健康職場」

 

をスローガンとして展開します。

 各事業場におかれましては、本週間を契機として、事業場内の労働衛生意識の高揚を図るとともに、自主的な労働衛生管理活動の一層の促進を図っていただきますようお願い申し上げます。